沸石(世界には約50種、日本には約30種あるそうです)

 沸石の魅力:「一般論+個人的意見です」
(1)現在でも、崖や採石場などで採取可能な鉱物です。(一般の国産鉱物は、年々採取が困難に)
(2)日本には約30種。もちろん希産種もありますが、比較的集め易い数と思います。
(3)一部の沸石を除いて、慣れれば同定が可能。(自分はまだその域に達していませんが)
(4)派手さは無いが、無色か白色の清楚な結晶です。
(5)形は大き過ぎず、小さ過ぎず。比較的、小さく可憐な物が多い。
(6)採取出来ない品種を購入にする場合でも、一般鉱物より安価。(例外も有りますが)
  「百聞は一見に如かず」、下表の写真を御覧になれば、お分かり頂けると思います。

 沸石の定義: 堀先生の「楽しい鉱物図鑑」と加藤先生の「沸石読本」より引用
         珪素の一部をアルミニュウムが置換え、酸素との比が(Al+Si):O=1:2となる、
         3次元型の結晶構造を持つ珪酸塩鉱物で、
「ゼオライト水」を持つもの。

簡単に言うと、低温・低圧で生成される、長石とほぼ同じ成分を持つ鉱物で、以下のような共通の特性を持つ。
(1)無色か白色でガラス光沢を持つ

(2)比重は2〜2.5

(3)モース硬度は3〜5

(4)加熱すると「ゼオライト水」が沸騰する。これがZeolite(沸騰する石)の語源。
 ゼオライト水:失っても結晶構造に変化が無い水。

 沸石の場合、Al・Si・Oで家を構成し、ゼオライト水は住人、他の金属(陽イオン)は家具に当たり、自由に入れ換えられる。


 沸石族鉱物(日本に有る30種)

NO 和名 
Name
化学式 形状 珪酸比率 
Si/(Si+Al)
特徴
 1 方沸石
Analcime
 Na[AlSi2O6]・H2O 偏菱24面体 60〜73%  玄武岩の空隙 
 2 ワイラケ沸石 
Wairakite
Ca[AlSi2O6]2・2H2O 偏菱24面体  (中)67% 高温で生成。
無色透明または、白濁している。 
 3 曹達沸石 
Natrolite
Na2[Al2Si3O10]・2H2O 正方形の柱状  58〜61% 玄武岩のような珪酸分に乏しい岩の中 
 4 中沸石 
Mesolite
Na2Ca2[Al2Si3O10]・8H2O 針状or柱状  60%  曹達沸石とスコレス沸石の中間に位置 
 5 スコレス沸石
Scolecite
Ca[Al2Si3O10]・3H2O 針状or柱状  60%  玄武岩のような珪酸分に乏しい岩の中 
 6 トムソン沸石
Tomsonite
NaCa2[Al5Si5O20]・6H2O 長板状  (最少)50%  石英と共存しない 
 7 ゴナルド沸石 
Gonnardite
Na5Ca2[Al9Si11O40]・12H2O   55%   
 8 ダキアルディ沸石
Dachiardite
(Na,K,1/2Ca)[Al4Si20O48]・18H2O 短柱状  (最多)83%   
 9 モルデン沸石
Mordenite
(Ca,K2,Na2)[AlSi5O12]2・7H2O 毛状or針状  81〜84%   
10 苦土沸石 
Ferrierite
(Na,K)Ca0.5Mg2[Al6Si30O72]・20H2O   83%  Mgを含む数少ない沸石 
11 濁沸石
Laumontite
Ca[AlSi2O6]・4H2O 先端が斜めに切れた
菱形の柱状 
67%  新鮮な内は透明から半透明だが、
乾燥すると白濁し非常に脆くなる
12 輝沸石
Heulandite
Ca[Al2Si7O18]・6H2O ・変形六角板状 
・六角柱状 
78%  方解石との直接共存例は殆ど無い 
塩酸に溶けない 
13 斜プチロル沸石 
Clinoptilolite
(Na,K,1/2Ca)6[AlSi5O12]6・20H2O 変形六角板状  83%   
14 束沸石
Stilbite
NaCa4[Al9Si27O72]・30H2O 細長い六角板状  75%  束状になる 
15 剥沸石
Epistilbite
3Ca[Al2Si6O16]・16H2O 頂部が封筒の裏の形  75%   
16 灰十字沸石
Phillipsite
K2(Ca0.5,Na)4[Al3Si5O16]2・12H2O   63%   
17 重土十字沸石 
Harmotome
Ba[Al2Si6O16]・6H2O   75%   
18 湯河原沸石
Yugawaralite
Ca[Al2Si6O16]・4H2O ・細長い尖った菱形の 
  先端の切れた形 
・不等辺六角板状
75%  塩酸に溶けにくい 
19 菱沸石
Chabazite
Ca[Al2Si4O12]・6H2O 立方体に近い菱面体  50〜79%   
20 エリオン沸石 
Erionite
NaK2MgCa1.5[Al8Si28O72]・28H2O   78%   
21 レビ沸石
Levyne
NaCa2.5[Al6Si12O36]・18H2O 六角板状結晶の 
不定方向の集合 
67%   
22 ギスモンド沸石
Gismondine
Ca[Al2Si2O8]・4H2O   50%   
23 グメリン沸石
Gmelinite
Na8[Al8Si16O48]・22H2O   67%   
24 コウルス沸石 
Cowlesite
Ca[Al2Si3O10]・6H2O   60%  
25 ステラ沸石
Stellerite
Ca[Al2Si7O18]・7H2O 細長い六角板状  78%  束状にならない 
26 エディントン沸石    斜方/正方     
27 テトラソーダ沸石    正方    
28 ガロン沸石    斜方     
29 ハーシェル沸石    六方     
30 ポルックス石 
Pollucite
(Ca,Na)[AlSi2O6]・nH2O 偏菱24面体  67%  硬度6.5〜7、石英に類似 


上記沸石族鉱物の選出と特徴は、「検索入門  鉱物・岩石」と「沸石読本」を参考にしました。
また、珪酸比率は、化学式からの算出と「楽しい鉱物図鑑」「楽しい鉱物図鑑A」の記述を参考にしました。
珪酸比率の近い物が、共存し易いと考えられます。(例:モルデン沸石とダキアルディ沸石)